2010/10/12(火)君の顔が好きだ

メンテに出していたギターが帰ってきた。
アコースティックなギターを買ってみたのは、このギターと一ヶ月程お別れするからだったりする。

ネックを交換したときに、元のネックより少し厚かった。ネックが厚いので、ブリッジ側の弦高を限界まで上げないといけなくて、オクターブ調整ネジが弦に干渉してしまう状態だったので、これを改善すべく調整してもらった。

最初は、ネックを削って薄くしましょう、と言われた。ネックのジョイント部分の厚みを削ると、それに伴ってネックの根元の平らな部分が大きくなってしまうので、これを解消する為にネックシェイプの削り直しが必要だ。塗装もやり直しになる。
ネックのシェイプを変える、というのは不安だ。それに、ギターをいじる際に一番値が張るのがこの塗装という行程なので、塗装が入ると懐が痛い。

と、工房の人と話しながら「塗装代は高いな〜」とケチな事を考えていたら、ひらめいた。ひらめいたままに、脳直垂れ流しで言ってみた。

「ボディの方でネックポケットのザグリを深くしちゃったらどうですかね?」

これならネックを加工しないで済むので、演奏性に対する変化は皆無だし、塗装という値の張る作業も必要としない。コストも少なく、演奏性に対する懸念もない。我ながら名案だと自画自賛した。

で、見積もってもらったら、
「ネックポケットのザグリを加工する場合、個別に金型を作らないといけないのでやっぱり工賃はある程度行っちゃいます」
だそうで...。
フェンダーとかの数が出ている既製品だったら既存の金型を使って工賃を押さえたり出来るの?と聞いてみたが、量産品でも個体差があるのでやっぱり逐一金型を作って作業する事になるそうだ。

ネックの形状、塗装の変化という、ギターで一番デリケートな部分をいじる事を回避できることから、ボディ側のザグリを深くする作業でお願いした。
素人が思いつきで言ってみた事を素直に検討して受け入れてくれるこの工房、ナイスだ。

ネックを交換した時にネックの厚みが違っていたり、ジョイントネジの位置が違っていたりで一筋縄で行かなかった事があって、仕上がりを待つ間もキチンとした状態になるのかが不安だった。ひょっとしたら仕上がってすぐに手放してしまうんじゃないかとも考えていた。既製品で安いものにでも買い替えてしまった方がいいんじゃないかと。

そして帰って来た仕上がりは...完璧!ばっちりだ。
工房の人に、「この楽器はイイですか」と聞かれたが、イイ。何がって、見た目が。このボディがカッコいいからお金を掛けて手を加えてまで使うのだ。君の顔が好きだ。性格なんてものは僕の頭で勝手に作り上げりゃぁいい。

素晴らしい仕事をありがとう、工房の人。
このギターを一生持つと思う。


というわけで、東京新大塚の ギター工房弦
フロントに出て来るのが若い人でつたない事もあるけれど、こちらの要望を真剣に考えてくれるいい工房です。
ただ、いい工房なだけに大忙しらしくて、今だと納期は一月以上掛かるみたい。